浅葱色が愛した嘘
『分からないと言った様子だね。』
どこからかまた違う男の声が聞こえた。
まるで好青年のような優しい声。
あぁ、この声を知っている。
忘れるはずなどない、憎いこの声。
『桂…小五郎……』
お前だけは心が…脳が…本能が覚えている。
『はははッ…いい目だ。
やはり、俺は君を是非とも手に入れたい。
一緒に来ないか?』
桂は高らかに笑い、桔梗に手をそっと差し伸べる。
『なっ…
ふざけるな!!』
何が一緒に来いだ。
ふざけるな。ふざけるな。
最も憎んできた奴の元へ行くなんざ、死んだ方がマシだ。
桔梗は刃を桂に向けた。
『そんなに俺が憎いか?
そんなに俺を殺したいか?
人間の子供を殺したくらいで…
妖の君が心を痛めたとでも?
今まで復讐のためだけに生きてきたとでも言うのか?』
桂の瞳は乾いていた。
何も映さない。
ぴくりとも、揺らぐ事のない、
心をなくした人形のような瞳。
そして、桂や高杉から匂うのは
おびただしい程の血の匂い_____。
殺した人間は千を越えるか。
桔梗は薄っすらと口角を上げ微笑んだ。
『お前の言った通り。
お前を恨み、憎み、そしてお前を殺すためだけに生きてきた。』
それの言葉と同時に桔梗は桂に斬りかかった。