浅葱色が愛した嘘
桔梗が屯所を後にして数刻後、
沖田は自然と目が覚めた。
『ん……桔梗…おはよう。
…………桔梗?』
返事が聞こえなくとも、自分の横に寝ているはずの桔梗が居ない事に、沖田すぐに気がついた。
バッと体を起こし、辺りを見回してもその姿は見当たらない。
それどころか、つい先ほどまで部屋の隅に置いてあった桔梗の荷物さえもなくなっている。
沖田は嫌な予感を感じた。
昨日…いつもとは違う桔梗の様子。
桔梗自ら、求めてくる事など初めてだった昨晩の出来事…
沖田は部屋を飛び出した。
スパーンッ!!!!
『土方さん!!!』
沖田が真っ先に向かったのは副長室だった。
その部屋には、土方と山崎。
そして他の幹部の姿もあった。
『総司か…
そろそろ来る頃かと思ってたぜ。
桔梗の事だろ?』
その場にいる皆が険しい顔をしていた。
『総司以外のここの奴らには伝えたが、
一番隊の隊士、
澄朔は昨晩、新撰組を脱走した。
これにより局中法度に従って
澄朔を見つけ次第、切腹を命ずる。』
沖田にとってそれはあまりにも残酷すぎる現実だった。