浅葱色が愛した嘘
辺りは白く美しい雪景色。
すっかりと木々の葉は枯れ落ちてしまった。
でもまた、この厳しい寒さを乗り越えた先には暖かな春の陽だまりが待っている。
彼の優しさによく似た、愛おしい温もり…。
『母上ー!
雪がキラキラしてるよ!』
『生桜(みおう)
手をあまり冷やしてはダメだよ。』
あの日から三年。
総司との間に出来た子を私は生桜と名付けた。
やはり妖の血が流れているせいか、
成長は人間よりも何倍も早い。
見た目は人間でいう、七つぐらいの年の女の子だ。
しかし、成長の早さはちょうど三年目に人と同じ早さに戻る。
雪のように白く、淡い群青色の瞳をした女の子。
玉のよう美しかった赤子は
変わる事なく美しいままに成長していった。
『母上ー?父上ってどんな人ー?』
桔梗たちが住んでいるのは人里離れた山奥だった。
生桜が妖の血を引いている事を知られないように。
桔梗はこの地を選んだ。
まだ幼い少女は自分が人間ではない事を自覚しているが力をコントロールする事はまだ不可能だった。
そして生桜は決まって一日一回は同じ質問をする。
『貴女の父上は強くて立派な人だった。
生桜って名前はね、
そんな父上のように優しく、春の陽だまりのように温かな子になってほしい。そんな願いが込められているんだよ。』
毎日同じ事を言っているのに、
生桜はそれを聞くと嬉しそうに桔梗に抱きつく。
『いつか…会いたいな…』
『……生桜…。』
そう思うのは仕方のない事。
桔梗は生桜に沖田はどこかで生きていると言ってきた。
死んだという嘘はつかなかったのだ。
『そうだな…
そろそろ潮時かもしれないな。』
桔梗の身体にもう、
実の兄である澄朔の力は残っていなかった。