浅葱色が愛した嘘
『もう私には澄朔の力は残っていない。
鎖が解けてしまった妖の血を抑える術がなくなりつつある。
私がこうやって人の心を持っているうちに、
この子の父親に会わせてやろうと思った。
そして願わくば……
私が死んだ後この子を愛し、育ててほしい。』
もう、本来ならば生桜は狩りを覚える歳だ。
だが、桔梗はあえて妖狐の血を引き出さなかった。
例え妖の血が流れていたとしても、我が子には普通の人間として生きてほしかったから……
『もう、時間がない…
明日の夜、総司のこの千年桜に来いと伝えてほしい。
だが、私が待っている事は伏せてくれ。
この子のためとは言え、本当は私も会うのが怖い。』
それでも、一度だけでもいいから、家族三人で過ごしたい。
それは桔梗の死ぬ前の最期の願いだった。
土方はガシガシと自分の頭を掻き、大きくため息をこぼした。
『全く、お前らは本当に世話の焼ける奴らだな。
俺はこの三年間、お前の願いを守るために鬼になった。
今度は仏にでもなれと?
笑わせんな。
そんな役目…
言われなくても引き受けてやるよ。』
土方はどこまでも優しかった。
『ありがとう、土方さん。』
桔梗は深く頭を下げた。
三年もの時を越え、
ついに沖田との再会の日がやってくる。