浅葱色が愛した嘘
『総司、お前に個人的な隊務を与える。
明日の夜から三日間、千年桜をの近くの空き家で見張りをしろ。』
その言葉に沖田は目を見開いた。
沖田が最も反応したのは土方の口からはっきりと言われた(千年桜)。
生涯、たった一度だけ愛する者を追いかけた際に訪れた思い出の場所。
なぜ、土方さんはその場所に行けと…?
何も知らない沖田が知るよしもなかった。
重たい静寂の空気が二人の間に漂う中、
睨み合う両者は一歩も引こうとはしない。
『嫌ですよ。
何で僕なんですか?
あんな気味が悪い所なんか行きたくありません。
他をあたって下さい。』
沖田は軽くあしらうと、土方に背を向けその場に寝転がる。
沖田はまるで千年桜での事を忘れたようだった。
違う…忘れたフリをしていた。
昔に負った古傷がかすかに痛む。
苦しくなる心。
沖田は耳を塞いだ。