浅葱色が愛した嘘
次の日、沖田は土方言われた通り、最小限の荷物をまとめていた。
(また…今夜も満月か。)
ふと、屯所の門をくぐれば昨日と同じ、鮮やかな満月が地上を照らしている。
ここ最近、何日も満月の夜が続いていたのだ。
それも、大きく真っ赤な血の色をした月。
『沖田さん…気いつけてや?』
山崎は一人、沖田の見送りにきていた。
隊務の目的を唯一知る山崎は、
弱々しく微笑む沖田の背中を見えなくなるまでずっと見守っていた。
沖田さん…。
後悔すんなや。
山崎はまだ肌寒い春の風を受けながら異様に輝く満月を見上げる。
『ほんま…気味が悪い。
これから何かが始まるんやろか…』
そんな山崎の予感が当たる日がやってこようとは、
この時、誰も予想してはいない。