浅葱色が愛した嘘
『どうして…なんで…
ここにいる…?』
あんなに探したのに見つからなかった。
それなこに、今更…。
あの頃の何も変わってない。
姿も声も…。
かつて俺が愛した桔梗のそのままの姿だった。
『総司…
許してくれとは言わない。
突然、姿を消した私を憎んだままで構わない。
でも、どうかこの子だけは…
何も知らずに生まれきた。
一度でいいから触れてやってくれないか?
父親であるお前に会う事を楽しみにしていたんだ。』
『……父親?』
この子が俺の子……?
沖田は桔梗と自分との間に子どもがいる事さえも知らない。
『どういうことだ?』
沖田の目は三年間の時を経てその瞳に桔梗を映した。
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『三年前…私は澄朔の光を取り込んだのを覚えているか?
戦いの後、私が意識を失っている間に澄朔の夢を視たんだよ。
初めて完全なる妖力解放をしたせいで、今まで制御出来ていた妖の力…
すなわち、力を押さえ込んでいた鎖が解けてしまった。
その夢の中で、自分の意思とは関係なく、やがてこの身体は妖となり、心を失うと、
そしてその時は大切なものも何もかも捨てる時だと澄朔に言われた。
初めは信じていなかった。
でも目を覚まし、日々の生活を過ごしていく中で、それを実感し始めていたんだ。
そんなある日、山崎さんから私のお腹に総司との子ども宿っている事を告げられた。
総司と離れるのは今しかない。
愛する人をこの手で殺める事…
いつか総司の事も分からなくなって、殺してしまう事が怖かった。
だから、何も知らせず、何も言わず、
お前の元を離れる事を決めた。』
沖田は何も言えないまま___。
今まで探し続けていた真実。
桔梗はもう、このままでは居られない。
あの日のように、尾が生え、牙が生え、完全に妖の血に飲み込まれていく。
『私は一人でこの子を生み、育ててきた。
妖の血も受け継いでいるから
人間よりは成長が早い。
生桜はずっと総司に会いたがっていた。』
今まで血に怯え、一人で戦ってきたのか?
それを俺は気づいてやれなかった。
時には恨み、憎み、それでも愛する事をやめられなかった。
『生桜……おいで?』
沖田は初めて我が子の名前を呼び、そっと手を差し伸べた。
生桜は少し戸惑い、桔梗の顔を覗く。
『いいよ、いってきなさい。』
そう言われたと同時、
生桜は沖田の胸に勢いよく飛び込んだ。