浅葱色が愛した嘘




その後、


千年桜のすぐそばにある空き家で三人並んで夜空を見上げた。



桔梗、生桜、沖田の順に並んで横になる。


家族三人、こうして寝る事を何度夢に視ただろうか。



既に眠っている生桜の頬に、桔梗はそっとキスをした。





『桔梗、俺には?』



そんな様子を見ていたのか、沖田は桔梗に接吻を求めてきた。






『バカな事を言うな。

生桜の前だぞ、』





気のせいか…桔梗の頬はほんのりと赤い。



そんな姿を沖田は愛おしく思い、


自分の手で無理矢理、桔梗の顎をクイッと上げると、



深い接吻を桔梗の唇に落とした。





『んっ……』




桔梗からは甘い声が漏れる。



『その声は反則。

止まらなくなりそうだからやめて。』



本当はこのまま襲ってやりたい。


三年分の寂しさを埋めるように、自分を桔梗へと刻み込みたい。



そうは思っていた沖田だったが、さすがに幼い我が子の前では無理だった。





『今日はこれで我慢かな。



桔梗…もう寝ようか。

今度は居なくならないでね?』





冗談ぽく沖田はそう言ったけれど、本当は不安で仕方がなかった。


またあの日みたいに、桔梗が消えてしまいそうで。



夢から覚めてしまいそうで。


そんな沖田の気持ちを悟ったのか、桔梗は微笑んだ。




『大丈夫だ。


もう、勝手に居なくなったりしないから。

お休み、総司。』






『あぁ、お休み。』






お互い、生桜に抱き合うような形で向かい合いそのままゆっくりと二人は眠りについていった。



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