浅葱色が愛した嘘







沖田は隊長という立場であるため、非番の日が他の隊士よりも少ない。




そのため、もうひと月以上も桔梗や生桜に会えずにいた。





『土方さぁ~ん。

もう俺、無理ですわ。』



桔梗に会えない寂しさからか、沖田はまるで子供のようにだだをこねる。



副長室でゴロンと横になり、コロコロと部屋を転がる沖田は


土方にとって仕事の邪魔でしかなかった。




『おい総司。
お前、いい加減出ていけ。

俺は暇じゃねぇんだよ、見りゃ分かるだろ』



土方は片付かない書物に追われ、少し苛立ちを見せていた。


普通の隊士なら、副長室で横になるなど、もってのほか。



切腹を命じられる勢いだ。


しかし沖田はそんな事を気に留める様子はなく


ひたすら部屋を転がり回る始末。






『んだーぁ!

分かったよ!
お前、桔梗に会えないとかの前に糖分足りてねぇんだろ!?

出かける準備をしとけ、甘味屋行くぞ』




なぜか土方は(甘味屋)に行くと言い出した。





『やったー!!』





沖田は飛び起き、大喜び。


沖田は明後日には非番だが、この調子だと明日の隊務をまともにやらない事が見えていた。


だからこうして、沖田が最も短で喜ぶ場所へ連れて行く事にしたのだ。





『え~っと…

ぜんざい一つ。
お団子四つ。
お饅頭は十個!』



甘味屋を訪れた土方と沖田。



沖田が注文した量は異常だった。




『てめぇ、そんなに頼んで誰が払うんだ?』





『そりゃぁもちろん、土方でしょ。



あ、桔梗と生桜のお土産に、
追加でお饅頭を二つお願いします!』





沖田は機嫌がよく、ニコニコしながら運ばれてきた甘味を口いっぱいに頬張る。




『ったく___

しょうがねぇ奴だな。』




面倒くさそうに言った土方だったが



その表情は安心したように、優しかった。


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