浅葱色が愛した嘘
『そこに居るのは分かっている。
これは今日の隊務の報告書だ。
土方さんに渡してほしい。』
黒い影は頷くと音も立てず文を受け取り消えた。
影の正体は新撰組観察方の山崎だった。
『よし、これで隊務は終わりだ。
ある意味この仕事は疲れる。
着物は息苦しいし、重くて邪魔だ。
これなら人を千人斬った方がまだ楽ぞ。』
重たい着物を脱ぎ捨て、桔梗は布団の上にパタリと横になった。
肩を揺らし大きく深呼吸をする。
『そんな物騒な事を申すでない。』
吉乃は呆れた苦笑いを浮かべ、桔梗が脱いだ着物を丁寧に畳んでいった。
『さぁ、もう寝るでありんす。
明日は長州の人間は島原に来る事はありんせん。
ゆっくりしておくんなんし。』
吉乃は同時に灯りを消した。
『おやすみ。桔梗』
『あぁ、おやすみ。吉乃。』
こうして桔梗は眠りついた。
ここ島原で過ごした一日はあっという間にすぎていった。