誓約の成約要件は機密事項です

涼磨の言い方は、仕事の契約のようだ。飲み込んだ後も残る烏賊の甘味を味わいながら、千帆は慎重に口を開いた。

「誠実で、優しい人がいいんです」

「なるほど」

ウーロン茶を飲み下して、喉の通りを良くする。結婚相談所に説明したことを思い出しながら、千帆は話し始めた。

「清潔感があって、身だしなみをきちんとしている方が良いです。でも、面食いじゃないつもりです。背は、私より高いと嬉しいですが、私の身長は155cmなので、そんなに高望みじゃないと思います。あ、体重も自分よりあった方がいいです。あまり細い人だと、ダイエットしなきゃいけない気がして」

さすがに体重は言わなかったが、大体分かるだろう。千帆の体重は、標準の範囲内だ。これも、そう難しい条件ではないと思う。

「そうだろうな」

あっさりとうなずいた涼磨に励まされ、さらに続ける。

「職業にはこだわりませんが、理由もなく転職を繰り返したりせず、真面目に働いている方。仕事ぶりは、人柄が分かれば多少判断できるかと思っています。希望年収は、一応書きましたが、若ければそんなに多くなくて構いません。私も仕事を続けるつもりですので、共働きに理解のある方を望みます」

千帆の会社の給与水準はそれほど高くないものの、賞与も出るし、経営は安定している。社内結婚している人も多いし、二人で働けば、暮らしに困ることはないだろう。