誓約の成約要件は機密事項です
「アンフェアは良くない」

結婚相談所の登録者たちと、同等の条件を揃えてくれたということだろう。ご丁寧なことだ。

生面月日に現住所、学歴、職歴、免許や資格などは、履歴書と同じような内容だ。趣味も、履歴書の構成によっては、記入欄のある書式もある。

履歴書には決して載っていない記載事項としては、身長と体重、健康状態。これは、芸能事務所のような特殊な応募先でない限り、通常はない事項だろう。

一枚目がそういった身上書で、二枚目は家族書と呼ばれるものだった。家族の氏名、生年月日、勤務先などが記載されている。

うっかり目にしてしまった千帆は、思わず一枚目で二枚目を隠した。

身上書は、本人の事柄だからまだ良いとしても、家族の情報まで知りたくない。プライバシー満載、個人情報ど真ん中だ。

うっかり落としでもしたら、大変なことだ。こんな恐ろしい用紙は、持っていたくもない。

「しっかり目を通したまえ」

つき返そうとした気配を察して、涼磨が釘を刺してくる。

「……っ」

上司からの命令に否と言えず、仕方なく目を通した。

父は言わずもがな、この会社の社長だ。祖父は会長。

母は、専業主婦のようだ。姉とその夫は、弁護士。絵に描いたようなエリート一家だ。

「何か問題は」

あるわけない。しいて言えば、こんなものを受け取って見てしまっていることだろう。黙って首を横にふるのが精一杯だ。
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