誓約の成約要件は機密事項です
「では、初回面談はクリアということで良いだろうか」

「え？」

“初回面談”というのは、千帆の入会した結婚相談所の用語だ。書類上で相思相愛となった相手と初めて実際に会うことを、“初回面談”と呼んでいるらしい。

初回面談がうまくいき、お互いもう一度会いたいとなれば、“仮交際”というステータスに変わる。継続して何度かデートを重ねながら、本格的に交際するかどうかを見極めるのだ。

結婚を前提に、本格的に交際することは、“真剣交際”と呼んで区別する。真剣交際がスタートすると、他の人を紹介してもらうことはできなくなり、お互い一対一でお付き合いし、結婚を目指すことになるのだ。

涼磨の言った“初回面談はクリア”というのは、付き合いを継続するか、という問いだ。もう一度会っても良いか、ということなのだ。

結婚相談所の場合、初回は結婚相談所に諾否を伝える。仲人を通じて連絡しあう、お見合いと同じだ。最初から個人でやり取りするのは、荷が重いからだろう。

ただ、千帆と涼磨の間に入る人はいない。直接聞くしかないので、涼磨が今問い質しているということだろう。

――待って。待って待って待って！

その前に、まさかとは思うが、涼磨は“継続”を、つまり“仮交際”を希望しているということなのだろうか。

混乱しきった頭では、何も浮かばない。まさしくパニックだ。
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