誓約の成約要件は機密事項です
「ということで、本気で結婚相手を探しているので、那央さんもいい人がいたら、ぜひ紹介してください! お願いします!」

合コンやらサークルやらに毎週顔を出している那央自身は、独身主義者。結婚願望が強い男性は、対象外なのだそうだ。

ターゲットにならないけれど惜しい人がいたなら、ぜひ紹介してほしい。

「それは構わないけど、千帆ちゃんも一緒に合コン行こうよ。それか、高いお金を使わなくて、マッチングサイトとかでもいいんじゃない? この前教えたアプリ、使ってみた?」

「いえ、私はあまり向いてないと分かったので、効率を求めていこうと思います」

那央は、暇つぶし程度に出会い系アプリも触っているようだが、写真やメッセージだけで、見ず知らずの人と仲良くなれるようなスキルは、千帆にはない。

合コンも、初対面の人とも盛り上がることができる人や、初対面で気に入られる可能性がある人が行くべきところだ。少なくとも、初めて会った人たちとお酒を飲むことを、それほど楽しいとは思えない千帆には、向いていないだろう。

それに、1回あたり、たかだか3人だか5人だかしかいない男性たちの中に、結婚を前提とした交際相手を、真剣に探している人が何人いるだろうか。いったい何度合コンに行けば、そんな人に会えるのかと考えてみれば、気が遠くなりそうだ。

だったら、最初から真剣に結婚を考えている人たちの中から、探した方が効率的だ。

「なるほどね。いい人いないか、周りにも聞いてみるわ」

「ありがとうございます!」

小躍りしながらお礼を叫んだとき、資料庫の入口に、人が立っていることに気づいた。
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