誓約の成約要件は機密事項です
確かに、涼磨のひととなりは、多少分かっている。身元もはっきりしているし、身上書まで用意してくれた。条件だけ見れば、見合い相手と変わらない。

「まあ、嫌なら断ればいいし、嫌じゃなければ会えばいいだけだと思うけどね」

「断る理由がありませんし、断れるはずもありません」

「それなら、会えばいいじゃない。別に悪い人には、見えないけど」

だから、困っているのだ。

けれど、那央のように、シンプルには考えられない。言葉にできないもやもやが、胸の辺りを漂う。

「もしかして、断ったら、職場にいづらくなると思ってる?」

「いえ。それは、考えていませんでした……」

気まずさはあるが、涼磨がそれを盾にどうこうするとは思えなかった。

「それより、結婚相談所の方は、進展あった?」

「いえ、入会時に四人の方に面談を申し込んだんですが、まだお返事がなくて」

「面談って、デートするの?」

「そうですね」

那央の顔が、パアッと明るくなる。こういう話が大好きなのだ。

「いいわねー! ねえ、どんな服着てく? メイク、もう少し濃くしてもいいんじゃない?」

「もし良かったら、買い物に付き合っていただけませんか? 結婚相談所の人に、服装を変えた方がいいと言われたんですが、どういうのが良いか分からなくて」

「わぁ、行きたい! すぐ行こうよ」
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