誓約の成約要件は機密事項です

初めてのお見合い

あまり眠れないまま、日曜日を迎えた。結婚相談所経由で初のデートだ。

那央に教わったメイクで、寝不足の肌を隠す。

洋服は、新しく買ったワンピースのうち、昨日着なかった方の一着。ハイウエストの切り替えがあり、スカート部分はボリュームのあるフレアになっている。那央と店員に、男性受けが良いと薦められたデザインだが、普段選ばないヒラヒラした装いは落ち着かない。

待ち合わせは、雰囲気のある、大人っぽいカフェだった。相手が、14時に予約を入れてくれている。

時間ちょうどにカフェに入ると、相手の男は、既に席についていた。

野々村光平、27歳。専門学校で職員として働いていると言う。

「初めまして。相澤と申します。お待たせしてしまいましたか」

「いえ。野々村です」

「よろしくお願いします」

野々村は、頷いただけのような軽い会釈をした。

とりあえず、飲み物を頼んだが、会話が始まらない。千帆も相当緊張していたが、野々村もそうなのだろう。

かといって、黙ったきりでいるわけにもいかないので、千帆は何とか話題を探す。

「実は、私……こうして男性とお会いするのは、初めてで」

「そうですか」

「先週、入会したばかりなんですよ」

「……」

軽く頷いたような気もするが、相槌のつもりなのだろうか。

続けて話してもいいものか、既に迷いそうになったところで、注文したものが運ばれてきた。
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