誓約の成約要件は機密事項です

花言葉は意味深

週明けに出勤すると、いつもギリギリに出社してくる那央が、珍しく待ち構えていた。

「お見合い、どうだった?」

「ちょっ! 那央さん、声大きいですよっ!」

慌てて、給湯室まで引っ張り込む。

「ごめん、気になっちゃって」

「私も聞いていただきたいことがあって。ランチのときにでも、相談に乗っていただけませんか?」

「まかせて! あー、早く仕事終わらせよっ」

那央は、意気揚々と自分のデスクへ帰って行った。

千帆は、紅茶でも淹れようかとマグカップを手にする。そのとき、廊下からよく通る低い声が聞こえてきた。

「おはようございます」

「おはよう」

涼磨だ。

千帆は、給湯室の奥で息を潜め、耳を澄ます。

引っ切り無しに人が行き交う中で、重たそうなドアの閉まる音が聞こえた。副社長室のドアが閉まった音だろう。

そっと廊下に顔を出すと、涼磨はいなかった。その隙に、自分の席へ戻る。

パソコンを立ち上げながら、ティーバッグで淹れた薄い紅茶を啜る。

コーヒーにすれば良かった。


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