誓約の成約要件は機密事項です
2回目のデートは偶然
月火水と忙しく働いたお蔭か、木曜日は不思議と余裕のある一日だった。定時ぴったりに会社を後にした千帆は、一息入れることにした。土日とも出かけていたので、遊んでばかりの気もするが、また新しい人に出会うためには、英気を養っておかなくてはならない。
会社帰りのご褒美の定番は、映画鑑賞だ。
ちょうど、会社近くの映画館の割引日に当たることを思い出し、寄ってみることにする。帰り道からははずれてしまうため、普段は出向かないが、比較的新しい映画館で、当時の最新鋭の設備を取り入れた館内は、ゆったりしていて居心地がいい。
観たい映画の上映開始時間は、一時間近く後だった。
チケットを買った後、辺りをぶらぶらして、二十分前に映画館に戻った。ロビーのベンチは、埋まっている。
他に座れる場所はないかと見回していると、ふと視線の合った人物がいた。
「……副社長」
同時に気づいたようだ。
涼磨は、少し薄暗い照明の中をずんずん進んで、千帆の前にやって来てしまった。会社帰りのようで、コートの中からスーツが覗いている。
「君も、映画を観に来たのか。一人か?」
「はい」
涼磨も一人のようだ。
「チケットを見せてくれ」
「え?」
会社帰りのご褒美の定番は、映画鑑賞だ。
ちょうど、会社近くの映画館の割引日に当たることを思い出し、寄ってみることにする。帰り道からははずれてしまうため、普段は出向かないが、比較的新しい映画館で、当時の最新鋭の設備を取り入れた館内は、ゆったりしていて居心地がいい。
観たい映画の上映開始時間は、一時間近く後だった。
チケットを買った後、辺りをぶらぶらして、二十分前に映画館に戻った。ロビーのベンチは、埋まっている。
他に座れる場所はないかと見回していると、ふと視線の合った人物がいた。
「……副社長」
同時に気づいたようだ。
涼磨は、少し薄暗い照明の中をずんずん進んで、千帆の前にやって来てしまった。会社帰りのようで、コートの中からスーツが覗いている。
「君も、映画を観に来たのか。一人か?」
「はい」
涼磨も一人のようだ。
「チケットを見せてくれ」
「え?」