誓約の成約要件は機密事項です
「住所を知られるのが嫌なのかもしれないが、調べようと思えば、君の住所くらいすぐ分かる。適当な理由を作って、人事部で調べればいいだけだからな」

「……そうですね」

「ただ、君の危機意識は、あってしかるべきものだ。僕以外の人間に送らせるときは、コンビニ辺りが妥当だろう」

「……」

「そもそもその前に、僕以外の男に送らせるなよ。車に乗るなんて、もってのほかだ」

「……」

「いいな?」

「……そういうこと、言わないでください」

ついに、千帆は根を上げた。

「なぜ?」

「なぜって……」

頬は赤く、自分の手のひらでも熱を感じるほどだ。心臓は激しく打ち狂い、呼吸もままならない。

「僕は、君を妻にしたいと思っている。これくらいの心配は、当然では?」

「心配? 要求じゃないんですか」

「……ああ。そうだな、要望だ。僕の希望を述べているに過ぎない」

やがて、涼磨はエンジンを止めた。千帆の住む小さなマンションの前だ。

「今度は、いつ会える」

「……」

涼磨の視線はいつだって厳しく、千帆はそれに耐え切れない。

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