誓約の成約要件は機密事項です
「愛情、か」
ぽつりと漏らされた一単語に、心臓が跳ねた。
恐る恐る顔を上げようとした千帆の顎に涼磨の指が添えられ、大きく上を向かせられた。
千帆の体が、無意識にビクリと大きく揺れる。いつもはそれで放される涼磨の手は、千帆の顎をしっかりと掴んでそちらを向かせていた。
「生理的嫌悪感は、ないように見える」
「そんなのありません」
「君と僕の間には、同じ職場で働く者として、ある程度の親愛の情があると思っていたが」
「……はい」
「それで、十分では?」
逃れようとする千帆の顎を、涼磨の指はどこまでも追いかけ、ついには両頬を覆われた。
――十分じゃない。
人としての好感があれば十分だと思っていたのに、違った。千帆は、自分が間違っていたことにようやく気がついた。
――あなたを好きになってしまったから。
だから、足りないことに気づいた。
好きになってしまったから、もっと欲しくなってしまった。同じだけ、返して欲しくなってしまった。
地歩は、必死で唇を引き絞り、目元に力を入れた。
そうしないと、何を口走り、泣き叫ぶか分からなかった。心が体からはみ出さないようにするだけで、精一杯だった。
ぽつりと漏らされた一単語に、心臓が跳ねた。
恐る恐る顔を上げようとした千帆の顎に涼磨の指が添えられ、大きく上を向かせられた。
千帆の体が、無意識にビクリと大きく揺れる。いつもはそれで放される涼磨の手は、千帆の顎をしっかりと掴んでそちらを向かせていた。
「生理的嫌悪感は、ないように見える」
「そんなのありません」
「君と僕の間には、同じ職場で働く者として、ある程度の親愛の情があると思っていたが」
「……はい」
「それで、十分では?」
逃れようとする千帆の顎を、涼磨の指はどこまでも追いかけ、ついには両頬を覆われた。
――十分じゃない。
人としての好感があれば十分だと思っていたのに、違った。千帆は、自分が間違っていたことにようやく気がついた。
――あなたを好きになってしまったから。
だから、足りないことに気づいた。
好きになってしまったから、もっと欲しくなってしまった。同じだけ、返して欲しくなってしまった。
地歩は、必死で唇を引き絞り、目元に力を入れた。
そうしないと、何を口走り、泣き叫ぶか分からなかった。心が体からはみ出さないようにするだけで、精一杯だった。