誓約の成約要件は機密事項です

誓約要件の追加

鈍く痛む頭を抱えて、始業時間ギリギリに出勤した。

淀む千帆とは裏腹に、オフィスはどこか浮ついている。

「はい、朝礼始めます。集まって」

課長の掛け声に、バラバラと人が集まる。毎日の恒例行事だ。

課長からの業務連絡に続き、部長から簡単な講話がある。

「えー、皆さん、おはようございます。一昨日は、忘年会お疲れさまでした」

お疲れさまでした、ご馳走様でしたと、皆が頭を下げる。

「昨日の祝日で、ゆっくり休めたかと思いますので、今日はテキパキ働いて、サッサと帰りましょう。俺もね、まだサンタさんしないといけないから、6時には帰るぞー。用がある人は、早めに言ってください。今年も残り一週間です。最後まで頑張りましょう。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

5分もかからない朝礼が終わり、皆がてんでに散っていく。

千帆は、隣の席の那央と一緒に自席に戻った。

「部長、まだサンタさん、してるんだ」

「お子さん、中学生だったような気もしますけど。みんなが早く帰れるようにっていう気遣いでしょうか」

「そうかもね。私たちも、定時で上がりましょう」

気合いを入れて書類をめくり始めた那央に、こっそり訊く。

「那央さん、ご予定が?」

「私じゃないわよ、千帆ちゃんがあるでしょ?」

含み笑いを隠すネイルは、ジェルできれいにコーティングされている。昨日、ネイルサロンに行ってきたのだろう。
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