誓約の成約要件は機密事項です
「……はい」

「ふふ、来年は、千帆ちゃんは副社長夫人かぁ」

「え?」

「……え?」

書類と一緒に頭を引っ張られて、こそこそと訊かれる。

「違うの? 忘年会の帰り、二人で歩いて行くのを見たから、私てっきり……。今日、副社長とデートじゃないの?」

「違います。今日は、高林さんと会うんです」

「高林って……何回目?」

「今日で、四回目です」

「そんなに会ってて……もしかして、今日決めるの? もう副社長のことはいいの?」

千帆は、黙って首を振った。周囲は本格的に仕事をし始めている雰囲気を気にしているふりをして、そろそろお喋りをやめてほしいと態度で表す。

「……本当に、いいの?」

千帆は、もう一度頷いて、パソコンの入力作業を始めた。

「じゃあ……私が誘っちゃおうかな。千帆ちゃんと会わないなら、向こうも暇だろうし。私も、クリスマスイブに予定の一つもないっていうのはつまらないもの」

「……え?」

「ん?」

きれいな微笑で首を傾げた那央から、慌てて目を逸らす。カタカタとキーボードを鳴らしていると、那央も勢いよくキーボードをたたき始めた。

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