誓約の成約要件は機密事項です
高林には千帆から、会って話ししたいと言っていた。その日を、どうしても今日にしてほしいと指定したのは、高林だ。
待ち合わせの駅前には、大きなクリスマスツリーが飾られている。待ち合わせの人や、カップルたちが、輝きを見上げていた。
「……高林さん」
「こんばんは」
先に着いていた高林は、寒さで頬を少し赤く染めていた。優しい微笑みに、ここのところずっと傷んでいた胸が、また違う痛みを主張してくる。
「すみません、お待たせしてしまったみたいですね」
「いや、俺が早く来たんだ。早く、相澤さんに会いたくて」
ストレートな言葉に、千帆の頬も赤らむ。
「外もなんだから、どこか入ろうか」
「はい……いえ、すみません、先に話をさせていただけませんか」
千帆の申し出に、高林の顔色がさっと変わる。千帆も、その強張りを解くようなことはできなかった。
幸い、人の流れから少し外れたここには、周囲の人もまばらだ。少しくらい話していても問題ないだろう。
「そうか……でも、食事くらいできないかな。クリスマスイブなんだ。プレゼントも用意してきた」
千帆は、耳を塞ぎたくなった。
「4年も結婚相談所に通ってて、初めてなんだ。会ってて、こんなに楽しかったの。俺は、相澤さんと真剣に、これからも付き合いたいと思ってます」
高林の真摯な言葉に、千帆は打ちのめされた。