この痛みが、もう少し続きますように。
「メガネ、似合ってないですよ」
「ドライアイなんだ。仕方ないだろ」
風が強い日は涙が止まらないらしく、精悍(せいかん)な顔つきの上に黒いフレームの眼鏡。
「一年生から相変わらず人気ですね」
「他に若い教師がいないからだろ」
「25歳って、若いんですか?」
「まあ、お前らから見ればおじさんって認識かもな」
先生は「はは」と眼鏡の下の瞳を細くした。
でも先生は私を見ない。
目を合わさない。あの日から、一度も。
「後悔してますか?」
あえて主語は使わなかった。
声はとても冷静なのに、胸の鼓動だけがバレない程度に騒いでいる。
「反省してるよ。社会人としてあるまじきことをしたって」