仮面のシンデレラ《外伝》
キキィーッ!!!
グラッ!!
突然、車内が大きく揺れた。
急ブレーキをかけた電車が軋むような音を立てる。
「きゃ…!」
立っていた彼女をとっさに支えると、車内にアナウンスが流れた。
『…ご乗車のみなさまにお知らせいたします。停止信号を確認しました。ただ今、状況を確認しております、しばらくお待ちください…』
「「…!」」
車両内がざわつき始めた。
「湊人くん、どうしたのかな…?」と、不安げに僕を見上げる彼女にそっ、と答える。
「大丈夫。きっとすぐに復旧するよ…」
と、その時。
再び車内にアナウンスが流れた。
『ご乗車のみなさまにご連絡いたします。先程、この先の〜駅にて人身事故が発生した影響で、ダイヤに遅れが発生しております。次の…駅から振替運送を行なっております。ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません…』
(!人身事故…?復旧のメドが立っていないのか…?)
「湊人くん。振替運送、って…?」
状況が分かっていない様子の彼女に、僕は耳打ちする。
「この路線の駅で事故が起きたらしくて、今乗ってる電車はエラが降りる駅まで行けないらしい。」
「えっ!」
「僕が降りる駅から、この電車の代わりとなる他の路線の電車が走ってるみたいなんだけど…」
その時、彼女は焦ったような表情で口を開いた。
「私の駅、この線の電車でしか止まらないよね…?」
「うーん…近くの駅までは行くんだけどね。そこから歩ける?」
「地図のアプリを開けばどうにかなるかもしれないけど…。この電車、いつ通常通りになるのかな…?」
「待っていても、復旧には時間がかかるみたいだよ。」