仮面のシンデレラ《外伝》
彼女の駅への乗り換えの時間を調べるが、どこも真っ赤に表示され、直通の電車はないようだ。
すると、彼女は急に動揺して早口で呟いた。
「ど、どうしよう…!12時前までに帰らないと…!間に合うかな…?」
「…!」
彼女は、スマホを操作してバス運行も調べているようだが、いまいちヒットしていない。
(“12時前までに”…?もしかして、お家が厳しいのか…?)
やがて電車が動き出し、僕の降りる予定の駅に到着した。
しかし、電車はそれ以上進む気配はなく、乗客は皆スマホを見つめて電車を降りて行く。
彼女は途方にくれたように困り果てた表情を浮かべていた。
(…仕方ない。この際だ…!)
僕は、彼女の手をすっ、ととった。
目を見開く彼女に、僕は告げる。
「僕の家は乗り換えして2駅なんだ。僕がエラを車で送るよ。それなら間に合うかもしれない。」
「え…っ!!」
彼女の家とは逆方面だが、車で向かえば可能性はある。
日付けが変わるまでに彼女を家に送り届けることが出来るかもしれない。
「湊人くん、いいの…?」
「うん、エラさえ良ければ。このまま待つより、早い気がするけど?」
彼女は、僕の手を握り返して頷いた。
こうして、僕たちは手を繋いだままホームを走ったのだった。