仮面のシンデレラ《外伝》
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「ヒールだよね、走れる?」
「大丈夫…!本当にありがとう…!」
僕の地元で電車を降り、暗い夜道を進む。
彼女の様子を見つつ10分ほど進むと、僕の住むマンションが見えてきた。
彼女は物珍しいようにその光景を見つめている。
(免許証…、あるよな?)
念のため財布を確認し、僕は素早く車の鍵を出した。
彼女は、安心したように表情を緩ませる。
そんな彼女を連れ、マンションの駐車場へ向かった僕は、指定された場所に停めていた車のドアを開けた。
「隣、乗って…、…あ!ごめん荷物は後ろに投げていいから」
「う、うん…!ありがとう、お願いします…!」
助手席に置いていた荷物を後部座席に移し、彼女は僕の隣に座った。
焦りながらもどこか緊張しているような彼女に、僕はエンジンをかけながら声をかける。
「エラ?」
「!ごめん、なあに…?!」
「シートベルト、忘れないでね。」
「?」
一瞬、きょとん、とした彼女。
僕も一緒にきょとん、として黒いシートベルトを彼女に見せると、彼女は「あっ!これね…!」と言って自らのを掴んだ。
僕の所作を真似するようにシートベルトをつけた彼女を確認し、僕はライトをつけてアクセルを踏む。
「一応、大学まで行くから、道が分かるところまで来たら案内してくれる?」
「うん…!ありがとう…!!」
彼女の返事を聞き、僕はハンドルを握ったのだった。