仮面のシンデレラ《外伝》


**


「ヒールだよね、走れる?」


「大丈夫…!本当にありがとう…!」


僕の地元で電車を降り、暗い夜道を進む。

彼女の様子を見つつ10分ほど進むと、僕の住むマンションが見えてきた。

彼女は物珍しいようにその光景を見つめている。


(免許証…、あるよな?)


念のため財布を確認し、僕は素早く車の鍵を出した。

彼女は、安心したように表情を緩ませる。

そんな彼女を連れ、マンションの駐車場へ向かった僕は、指定された場所に停めていた車のドアを開けた。


「隣、乗って…、…あ!ごめん荷物は後ろに投げていいから」


「う、うん…!ありがとう、お願いします…!」


助手席に置いていた荷物を後部座席に移し、彼女は僕の隣に座った。

焦りながらもどこか緊張しているような彼女に、僕はエンジンをかけながら声をかける。


「エラ?」


「!ごめん、なあに…?!」


「シートベルト、忘れないでね。」


「?」


一瞬、きょとん、とした彼女。

僕も一緒にきょとん、として黒いシートベルトを彼女に見せると、彼女は「あっ!これね…!」と言って自らのを掴んだ。

僕の所作を真似するようにシートベルトをつけた彼女を確認し、僕はライトをつけてアクセルを踏む。


「一応、大学まで行くから、道が分かるところまで来たら案内してくれる?」


「うん…!ありがとう…!!」


彼女の返事を聞き、僕はハンドルを握ったのだった。


< 18 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop