仮面のシンデレラ《外伝》
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「道も空いてるし、間に合いそうだね。」
車を走らせながら、僕は彼女に声をかけた。
安心したように息を吐く彼女に、僕は尋ねる。
「門限とか、厳しいの?」
「!そうじゃないの!私、1人暮らしだし…。」
(?そうなんだ…?)
彼女は、何かを誤魔化すように躊躇しながら続けた。
「えっと…1人暮らしって言っても、1人じゃなくて…。“猫”がいるんだけど…。」
「へぇ…!いいね。じゃあ、早く帰ってあげなきゃね。」
すると、彼女は少し戸惑うように僕に答えた。
「それもそうなんだけど、問題はそこじゃないの。」
「?」
目の前の信号が赤になり、車を止める。
隣をちらり、と見つめた僕に、彼女は静かに言った。
「実は私、普段は家政婦…のような仕事をしていて…。その雇い主がちょっと厳しい人なの。」
(“家政婦”…?ハウスキーパーみたいなバイトってことか?)
彼女はまつ毛を伏せて続ける。
「その人に帰りが遅いことが知られたら、ちょっと厄介なの。…特に、“男の人”と出かけてた、なんて知られたら…」
「…?」