仮面のシンデレラ《外伝》
上手く状況は掴めなかったが、つまりその雇い主が原因で彼女が縛られているということなのだろうか?
彼女は労働環境に恵まれていないらしい。
僕は、さりげなく彼女に言った。
「きっとその人は、エラが悪い男に騙されてないか心配なんだよ。その…“親気分”みたいな…」
「…。」
彼女は、それを聞いて少し黙り込んだ。
しかし数秒後、小さく呟く。
「違うと思う…。その人、実は私の義理のお母さんなんだけど…、私のことはそんなに好きじゃないみたいだから…」
(…!)
突っ込んではいけないことを聞いてしまった気がした。
なんと返事をすればいいのか分からないでいると、彼女は僕の心中を察したのか、はっ!として口を開いた。
「ごめんね、暗くなっちゃった…!大丈夫!私はお義母さんのこと好きだし、優しくしてくれる時もあるから。…あの人は、愛し合っていた私のお父さんと死に別れて、愛に飢えてるだけなの。」
健気なその発言は、まるでシンデレラを読んでいるようだった。
彼女の境遇は、シンデレラそのものに思えた。
“エラ”というあだ名を誰が付けたのかは知らないが、彼女ほどぴったりな人はいないだろう。