仮面のシンデレラ《外伝》


ブロロロ…


車が暗い夜道を走る。

2人だけの空間が、やけに静かだ。


「…あ、湊人くん。そこの信号、左に行ってくれる?」


エラの指示に従い、僕はハンドルを切った。

ライトに照らされた道は大学の近くで見知っているはずなのに、どこを走っているのか全く分からない。

やがて、道路沿いにコンビニが見えてきた。

エラは、辺りを見回して僕に声をかける。


「湊人くん、そこのコンビニに入ってくれる?」


…キキ…!


静かにブレーキを踏むと、エラはシートベルトをゆっくり外して微笑んだ。


「ありがとう。私の家ここから近いから、ここで大丈夫。…本当に助かった。」


時刻は、午後11時半。

どうやら間に合ったようだ。

辺りは街灯があると言っても夜の闇に包まれている。

人通りも少ない。


「夜道だけど大丈夫?近くまで送ろうか?」


「ううん、平気!本当にすぐそこだから。ありがとう…!」


彼女は、ガチャ…!と車のドアを開け、ヒールを地面につけた。

そして、くるり、と振り向き、僕に微笑む。


「今日は本当に楽しかった。予定を空けてくれてありがとうね。」


「こちらこそ。気を付けてね。」


「うん。…じゃあ、またね…!」
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