仮面のシンデレラ《外伝》
すると、彼女は照れたように答えた。
「ううん。…湊人くんは何が好きかなーって思って調べてたら、すごい量になっちゃって。」
苦笑する彼女は、僕から目を逸らして続ける。
「どうせなら、一番いいお店を見つけたいでしょ?…せっかく、湊人くんと2人で出かけられるんだし。」
(…可愛いな。)
隣にいる彼女が、さらに愛おしく感じた。
彼女も僕と同じように、“2人の時間”を特別に思ってくれていることが嬉しかった。
「僕が予約を取っておこうか?」
「えっ!いいの?」
「うん。…じゃあ、来週の日曜辺りはどう?」
ぶんぶんと頷く彼女に、つい吹き出す。
エラは、鞄から手帳を取り出し印をつけた。
僕との予定が彼女の手帳に埋まっていく。
「じゃあ、その日までに借りた本を読んでおくね。」
彼女は、感想を言い合うのを心待ちにしているようにそう言った。
穏やかに頷いた僕は、結局、彼女の“素性”について深く聞くことは出来なかった。