仮面のシンデレラ《外伝》
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…時は流れ、ついに約束の日になった。
時刻は午後1時半。
待ち合わせ場所の駅前で、僕はエラの姿を探していた。
予定の待ち合わせ時間より、30分経過している。
連絡はない。
(…時間、僕が勘違いしてたのかな。それとも、エラに何かあったのか…?)
少し不安になりながらベンチに腰掛けていると、やがて改札からヒールの足音が聞こえてきた。
カッ、カッ、カッ…!
焦ったようにこちらへ駆け寄るエラの姿が目に入る。
ほっ、と肩の力が抜けた。
「エラ!走らなくていいよ、転ぶ転ぶ。」
彼女の必死な表情を見てつい笑い出す僕に、エラは今にも泣きそうな顔で頭を下げる。
「ごめんなさい…!すごい待たせちゃって…!」
「大丈夫だよ、何かあった?」
すると、彼女は顔を曇らせて呟く。
「本当は、早めに着く予定だったんだけど、家を出るときにお義母さんに見つかっちゃって…」
「…!」
エラの瞳が、弱々しく揺れた。
こんな表情の彼女を見るのは初めてだった。