仮面のシンデレラ《外伝》

(そういえば、少し“訳あり”なんだよな。)


“その人に帰りが遅いことが知られたら、ちょっと厄介なの。…特に、“男の人”と出かけてた、なんて知られたら…”


かつてのエラの声が蘇る。


「…大丈夫だった?」


僕がそう尋ねると、彼女はぎこちない笑みで静かに答えた。


「うん、湊人くんのことは誤魔化してきたから、たぶん大丈夫。…ごめんね、遅くなって。」


僕は、しゅん、としているエラに笑いかけ口を開く。


「大丈夫だよ。予約した時間には間に合うから。…さ、行こっか!」


こくり、と頷くエラは、やっといつもの彼女に戻ったように僕に笑い返した。


**

────
──



「はーっ、美味しかったね。」


夕方の道を、2人で並んで歩く。

僕がにこやかにそう言うと、エラもお腹をさすりながら笑って続けた。


「ね!どれも美味しかったけど、私的には蟹のクリームパスタが一番かな…!」


「あはは!たしかに、ビュッフェでいっぱい取ってたもんね。」


僕の言葉に「えへへ…」と苦笑したエラは、幸せそうな表情で空を見上げる。


「楽しかったな…。…ご飯を食べながらお喋りをするのがこんなに楽しかったのは初めて。」


「…そうだね。」


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