仮面のシンデレラ《外伝》
2人の間には、穏やかな空気が流れていた。
やがて、2人が分かれる路地に着く。
名残惜しそうにこちらを見上げるエラは、ふと思い出したように声をあげた。
「そうだ、湊人くん。…これ、ありがとう!」
鞄から取り出されたのは、僕が貸した本だ。
「すごく面白かったよ…!一気に読んじゃった!」
にこにこと笑う彼女は、すっ、と僕に本を差し出す。
…と、僕が彼女から本を受け取った
次の瞬間だった。
ブワッ!
「「!!」」
突然、本の表紙に広がる“薔薇色の魔法陣”。
シュルッ…!
魔法陣からイバラが伸びる。
(な、何だ?!)
今にも僕に絡み付こうとする意思を持ったイバラに声を失った。
血の気が引き、体が動かない。
「湊人くん!」
その時。
視界に空色の光が見えた。
エラの瞳が、どんどん光を宿していく。
(…!)
パァン!
薔薇色の魔法陣が、エラの光とともに砕け散った。
…バサッ!
僕の手から滑り落ちる本。
目の前には、空色の瞳をしたエラがいた。
「…エ…エラ…?」