仮面のシンデレラ《外伝》


(…!まずい、やらかした…)


今の発言は、まるでストーカーだ。

さも、いつも彼女のことを見ていたような口ぶり。

…あながち間違ってはいないが、僕は“引かれた”と思い、咄嗟に言い訳を口にする。


「ええっと…、その本。難しくてあまり手に取る人がいないから。…借りてる人が、“珍しいなぁ”って。」


「!…あ、あぁ…」


彼女は、僕の誤魔化しに納得したのか、警戒を和らげたように静かに答えた。


「この本に、有名な著者の方が紹介されているんです。少し調べようと思って…」


(…童話繋がりだったのか。)


妙に納得して、僕は「そうなんですか…。」と曖昧な返事をしてしまった。

伝記を抱える彼女に、僕はふとあることを思い出して口を開く。


「人物の歴史や著名な文学を探しているなら、地下の書庫の方がたくさん見つかると思いますけど…」


「え?」


「大学の学生証を入り口でかざすと入れる書庫です。…知りませんか?」


すると、数秒後。

彼女は焦ったように目を泳がせた。


(…?)


見たこともない表情に見惚れていると、彼女は申し訳なさそうに僕を見上げて呟いた。


「…ご、ごめんなさい。…私、ここの生徒じゃないんです…!」


「え…!」


するとその時。

彼女が、ぱっ!と僕のシャツの袖を掴んだ。

ぴくっ!と反応すると、彼女は僕に詰め寄るように小声で言いよる。


「お願い…!黙ってて…!!」


…これが、僕と“エラ”の出会いだった。


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