仮面のシンデレラ《外伝》
**
「…ごめんね、来ちゃった。」
弱々しく笑う彼女を、急いで部屋へ引き入れる。
彼女は、何も言わない。
その肌はすっかり冷え切っていて、服はびしょびしょに濡れていた。
「…とりあえず、シャワー浴びて。すぐお風呂沸かすから。」
僕の言葉に、彼女はこくり、と頷く。
予期していない展開に、動揺が抑えきれない。
…ガチャ。
リビングの扉が開き、彼女がおずおずと入ってきた。
僕の用意したシャツに袖を通し、ズボンの裾を巻くって履いている。
「ちゃんと温まった?」
「…うん。」
まつげを伏せた彼女に、優しく声をかける。
「おいで、エラ。」
とことこと歩み寄ってきた彼女は、どこか危うい感じがした。
いつもの彼女の違うことがすぐに分かる。
ふわっ…!
エラの濡れた黒い髪に、彼女の首にかけてあるタオルを優しくかけた。
わしゃわしゃとなるべく丁寧に拭くと、彼女は、ほっ、としたように肩の力を抜く。