仮面のシンデレラ《外伝》
「…何かあった?」
「!」
僕の問いに、彼女はぴくりと反応した。
きゅ…、と僕の服を掴む彼女は、小さく答える。
「…ごめんね、湊人くん。私、この前勝手に帰っちゃって…」
優しく彼女を撫でた僕は、そっ、と尋ねた。
「…何か、理由があったんだよね?」
黙り込んだエラは、何かを決意したように呼吸をする。
そして、ゆっくり僕の方を見上げ、視線をそらさずに呟いた。
「…私、湊人くんに秘密にしていたことがあるの。…もう、気づいていたかもしれないけど…」
ドクン…!
心臓が鈍く音を立てた。
「僕が聞いてもいいことなの?」
「…うん。ちゃんと知って欲しいの。…湊人くんには…」
僕は彼女をソファに誘い、2人並んで腰を下ろす。
沈黙が部屋を包む中、彼女がゆっくりと語りだした。
「…湊人くんに借りた本にかけられていたのは、私のお義母さんの“魔法”なの。」
(…!)
エラは、静かに言葉を続ける。
「…そして、お義母さんの魔法をかき消したのは、“私の魔法”。」
すっ、と僕を見上げた彼女は、迷いを振り切ったようにはっきりとその言葉を口にした。
「私は人間じゃない。…人が立ち入ることを禁じられた不思議の国に住む魔法使いなの。」