仮面のシンデレラ《外伝》


**


「…ん、ん……っ…」


そのまま、欲に任せるように唇を重ねた。

何度も奪うキスの合間に溢れる吐息。


…ドン…!


壁にもたれかかる彼女へキスの雨を降らせる。


「…はっ……」


離れた唇。

彼女は僕を見上げたまま瞳を潤ませた。

それは先ほどの涙ではない。


…ぐいっ!


軽々と抱き上げた体。

僕に身を任せる彼女を、そのままベッドに運ぶ。


ギシ…!


出来るだけ優しく降ろしたつもりだが、さすがに余裕がない。

数秒見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねた。


…ポゥ…ッ!


その時。

エラの体が光を帯びた。

だんだんと空色の魔力に包まれる彼女。

漆黒のロングヘアが、息を呑むほど美しい銀髪へと変わっていく。

時計の針は、“午前12時”を指していた。


「…っ…」


ぱっ、と、彼女が顔を背けた。

腕で覆い隠そうとする彼女を、僕は、きょとん、と見つめる。


「エラ…?」


「…み、見ちゃやだ…」


そっ、と腕を退けると、初めて見る姿の彼女がそこにいた。

髪と瞳の色だけが違う。


「…なんで隠すの?」


「…は、恥ずかしいもん…」


優しく、頬にキスを落とす。

目を丸くする彼女に、僕は微笑んだ。


「…綺麗だよ。」


「!」

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