仮面のシンデレラ《外伝》


「…ん…」


(…!)


その時。

エラが、ふっ、とまぶたを開けた。

ゆらゆらと焦点の定まらない寝ぼけた瞳と目が合う。


「…おはよ、エラ。」


「!!」


急にこちらに背を向ける彼女。

理由は大体察せるが、僕は彼女の背に向かって尋ねる。


「…どうしたの?」


「…。」


恥ずかしがってこちらを見ないエラに、堪らなくなった。

ぎゅう、と背中から抱きしめると、彼女はぴくん!と体を震わせる。


「…照れてる?恥ずかしい?」


「…あ、当たり前だよ…っ…」


華奢な彼女の肩に口付けると、エラは「っ。」と吐息をこぼして口を開いた。


「も、もう朝だよ…!」


「…ダメ?」


「!」


少し甘えてみると、彼女もまんざらではなさそうにちらりとこちらを向く。


「…えっと…。…キ、キスくらいなら……」


「…ふふ。」


軽く唇を合わせると、お互い、くすり、と笑い合った。

エラが、そっ、と僕の首へ腕を回す。


「…エラ?」


彼女の名を呼ぶと、耳元で小さく声が聞こえた。


「…ずっと、このまま居られればいいのに。」


(…!)

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