仮面のシンデレラ《外伝》
ふっ、と、現実に引き戻された気がした。
エラは、悟っていたのかもしれない。
…最後を感じている僕と同じように。
「…ねぇ、湊人くん。」
「…ん…?」
「…私と会えなくなったら、寂しい?」
漆黒の瞳が僕を映した。
嘘偽りのない言葉がさらり、と出る。
「…寂しいよ。」
エラは、嬉しそうに表情を緩めた。
照れたように笑う彼女は、僕に尋ねる。
「どれくらい…?どれくらい寂しい?」
「…うーん…」
少し冗談混じりの声で、僕は答えた。
「…君が僕の前から消えたら…寂しくて死んじゃうかもな。」
「あははっ。…湊人くんって、意外と寂しがり屋さんだもんね。」
おどけて笑う彼女は、僕を見つめて言った。
「…まるで、“ウサギ”みたい。」
「え?」
「だって、私が居ないと寂しくて1人では生きられないんでしょ?」
優しく微笑む彼女は、そっ、と僕の顔を覗き込む。
(…“ウサギ”、か…。)
「…じゃあ、来世はウサギにでもなろうかな。」
「…ふふ。湊人くんがウサギかぁ。」
「…似合わない?」
「…ううん。きっと私は、湊人くんを1人にしないように、ずっと側にいるんだろうなあって思って。」