仮面のシンデレラ《外伝》
ガタッ!
無意識のうちに立ち上がっていた。
読んでいた本を素早く返却ポストに投函し、僕はスマホを耳に当てたまま駆け出す。
「エラ?エラ??聞こえるか?答えてくれ…!」
必死に呼びかけるが、返答はない。
嫌な予感がこみ上げた瞬間、“ブツッ!”と通話が切れた。
ぞくりと震えが走る。
(間違い電話…なはずがない。…何かがあったんだ…!)
僕の足は、自然と“ある場所”へと向かっていた。
大学を出て、駅前の図書館を通り過ぎ、賑やかな商店街を抜ける。
そして、見えたのは暗がりの続く路地だった。
タッ、タッ、タッ…!
入り組んだ迷路のような路地が僕を誘い込む。
来た道を記憶する余裕はないが、後戻りなどするつもりもない。
「はぁ…っ…!」
呼吸を乱し、角を曲がった。
視界に映ったのは、高々とそびえるレンガの壁。
行く手を阻むように立ちはだかる壁に、ごくりと喉がなる。
(この先に…エラがいる。)
壁をひたすら調べた。
どうにかして登ろうとするが、ツタを足場にするには頼りない。
…ザァ…ッ!
その時、辺りを風が吹き抜けた。
次の瞬間、キラリと視界の端に何かが光る。
(…!)