仮面のシンデレラ《外伝》
それは、小さな“ドアノブ”だった。
金色に光るドアノブは、以前に来た時は夜の闇に紛れていたせいで気づかなかったのだろう。
しかし、その扉はレンガ一個分の大きさしかない。
(…まさかな。…こんな小さな扉、華奢なエラでも入れない。)
「…。」
数秒、じっ、と扉を見つめた。
いくら考えたところで、新たに得た“手がかり”はこれしかない。
…カチャ。
ミニチュアのようなドアノブをつまんでひねる。
キィ…!
…と、警戒しつつ扉を開けた
その時だった。
ゴォッ!!
「!」
たしかに感じる風の気配。
扉の向こうに、真っ暗な闇と螺旋階段が見える。
ぐいっ!
突然、体が引きずり込まれた。
抵抗するまもなく、扉がブワッ!と広がる。
「 …っ?!」
ぐらり、と視界が揺らいだ。
異空間へと真っ逆さまに落ちていく。
「うわぁぁぁぁぁあっ?!!!」
目まぐるしく変わる景色。
逆回りに進む、数え切れないほどの時計の針。
宙を舞う無数のトランプ。
(な、何が起こって…?!)
目の前がチカチカして、意識を手放しそうになった、次の瞬間だった。