仮面のシンデレラ《外伝》
優しげな声に、警戒しつつ答える。
「…橘 湊人です。…“ぼく”っていう歳では……」
くすり、と笑った女性は、艶のある髪をさらり、とといて笑みを浮かべた。
「…“湊人”、ねぇ…。あなたが……」
「…?」
トレメインは、なにかを言いかけ、すっ、と口を閉ざした。
なにを考えているのかわからない笑みを崩さぬまま、彼女は僕を見つめる。
「…あなたは、どうしてここに?」
催眠にでもかけられているような、ふわふわした感覚がする。
「…彼女を……。…エラを探しに来たんです…エラに会うために…」
僕の答えに、トレメインはくすりと笑った。
そして、次の瞬間。
信じられない言葉を口にした。
「…そう、残念ね。…あの娘は“投獄”されるわ。逃れることはできない。」
「…!」
「人間と懇意になったスパイ容疑で、ジョーカーに“密告”されたのよ。…やがて、城の地下牢につながれるでしょうね。」