仮面のシンデレラ《外伝》


ばっ!


思わず、立ち上がる。

血の気が引いて、居ても立っても居られない。


「…ふふ。今すぐにでも会いたい、って顔ね。」


気が動転しそうになっている僕を見上げたトレメインは、静かに言葉を続けた。


「まさか、助けに行くつもり?…無駄よ。魔力を持たないあなたは、ジョーカーに近づくこともできない。愛しの彼女に会えぬまま記憶を消されて人間界に帰されるか、そのまま殺されるわ。」


(!)


どきん、と心臓がなった。

今の心境では、冷静に物事を考えることすら出来ない。

ただ、焦りだけがこみ上げた。

エラに残されたタイムリミットが分からない以上、今すぐにでも駆け出したい。

すると、トレメインがすっ、と目を細めた。


「…そんなに、あの娘に会いたい?」


「!」


何かを試すような視線が僕を貫いた。

ごくり、と喉がなる。


「…会いたい、です。…何に変えても。」


僕の言葉に、薔薇色の瞳が微かに光った。

彼女は、その答えを待っていたかのようにくすりと笑う。


「…一途なのね。気に入ったわ。…そこまで言うなら、私があなたを“魔法使い”にしてあげる。…私と“契約”を結べば、人間であることを隠してこの国に居続けることが出来るわ。」


「!!」


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