仮面のシンデレラ《外伝》
お互い、無言で数秒見つめ合う。
すると、僕の顔をまじまじと見つめた少年が、ぽつり、と小さく呟いた。
「…まさか、“ミナトくん”…?」
「!」
彼の言葉に、どきり、と心臓が鳴った。
まるで本物のような尻尾が、しゅるり、とうねる。
その時、かつてのエラの声が頭をよぎった。
“えっと…1人暮らしって言っても、1人じゃなくて…。“猫”がいるんだけど…。”
僕が目を見開いた瞬間、ばん!と急に扉が開いた。
はっ!としたその時、少年が、ぎゅうっ!と僕に抱きつく。
「エラが…、エラがいなくなっちゃったんだ…!どうしよう…!!」
ぷつりと緊張の糸が切れたようにぼろぼろと泣き出す彼。
僕は動揺しながらも静かに彼をなだめる。
「…一体、何があったんだ?今、この家にエラはいないの?」
こくこく、と何度も頷く彼。
するとその時、カツン…!と彼の手から“スマホ”が滑り落ちた。
それは見覚えのあるピンクのケース。
エラの携帯だ。
僕は、そっ、と彼に尋ねる。
「もしかして、さっき僕に連絡して来たのは君…?」