仮面のシンデレラ《外伝》
「っ!」
その時。
ぴくん、と、チェシャの尻尾が跳ねた。
ローズピンクの瞳が微かに熱を帯びる。
「ミナト!突き当たりを右だよ!」
「えっ?」
ぼやっ、と見える相棒の少年が、興奮したように声をあげた。
「エラの魔力を感じる…!」
(!!)
はっ!とした。
背後から迫る影を、入り組んだ廊下の角を利用して撒いていく。
「どうする?!牢にはきっと魔法の鍵がかかってるよ!」
早口でそういったチェシャに、僕は不敵に微笑んだ。
どくん、と体が魔力で脈打つ。
「心配いらない。一気に扉を蹴破る。」
「えっ?!」
チェシャが目を見開いた直後、廊下の突き当たりに差し掛かった。
カウントダウンが始まる。
(…3、2、1…っ!)
ぐいっ!
チェシャの手を引いた。
牢の扉の前で、一気に魔力を放出する。
ガチャン!!
薔薇色に染まる瞳に、抵抗なくロックが解除された。
そしてチェシャが息を呑んだ瞬間、僕は勢いのままに一瞬だけ空いた扉に飛び込んだ。