仮面のシンデレラ《外伝》
…と、その時。
チェシャがローズピンクの瞳を輝かせた。
ふっ!と体に灯る魔力の光。
色を取り戻していく体に、息を呑む。
そして、空色の瞳に僕が映し出された瞬間、エラは言葉を失った。
「ミナトがここまで連れて来てくれたんだよ!すごいでしょっ!」
「「……。」」
はしゃぐチェシャの頭上で交わる視線。
何とも言えない空気が2人の間に流れた。
きょとん、と、するチェシャは、僕とエラを交互に見つめている。
…ザワザワ…
(!)
その時、牢の外から騒がしい声が聞こえてきた。
僕らを探す追っ手が迫って来たらしい。
ぴくん、と尻尾を揺らしたチェシャが、エラから離れ、扉へ向かう。
「ち、チェシャ…?」
動揺して声をかけるエラに、チェシャは、優しく微笑んで答えた。
「僕は外で見張りをしてくるよ。…2人で話したいんでしょ?」
「「!」」
「…ちょっとの間だけ、エラを独り占めさせてあげる。」
ぱちり、と僕を見たチェシャは、気を遣うように、すっ、と歩き出した。
再び瞳を輝かせ、姿を消したチェシャが外へ出て行く。
…ガチャン。
残された2人は、黙ったままチェシャの背中を見つめていた。