仮面のシンデレラ《外伝》


ぐいっ!


「っ?!」


掴まれた首元のシャツ。

引き寄せられたと思った瞬間、柔らかい彼女の唇が僕の口を塞いだ。


「…っ、ん…!」


ぎゅう!と抱きしめられる体。

状況がつかめず、ただ目を見開く。


「はぁ…っ!」


離れる唇。

ほんのり頰を赤く染めたエラは、驚きで固まる僕に向かって小さく呟く。


「…湊人くんは、私のものなのに…」


(!)


不謹慎にも、どきん!と胸がなった。

今喜ぶのは反省が足りないと自分でも分かっているのだが、目の前の彼女が愛おしくてしょうがない。

ぎゅっ!と僕に抱きついた彼女は、少し拗ねたように小さく言った。


「…私以外の人とキスしないで…!…私のためでも、絶対だめ…!」


(…!)


エラは、再び僕にキスを落とした。

可愛く啄ばまれた唇は、すぐに離れる。

彼女は、恥じらいなんて感情を吹き飛ばすように言い切った。


「これで上書き…!」


「!」


彼女の顔を見た瞬間。

僕の中で何かが切れた。


(…もう、だめだ。)


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