仮面のシンデレラ《外伝》
穏やかさとは、かけ離れた冷たい光を宿す薔薇色の瞳。
彼女に違和感を感じていると、トレメインは静かに呟いた。
「牢獄の中でちゃんと会えたようね。…忌々しいわ。」
(…!)
どきり、とした。
全てを見透かされているようで、得体の知れない恐怖がこみ上げる。
すると、僕の隣に座り込んでいたチェシャが、見たこともないような険しい顔をしてトレメインを睨んだ。
「…何をしに来た…!エラの家に近づくな…!」
敵意むき出しの低い声に動揺が生まれる。
(チェシャ…?)
彼の様子を伺っていると、トレメインはくすり、と笑ってチェシャに答えた。
「相変わらず躾のなっていないノラ猫ね。…私は湊人に会うために来たのよ。契約について“言っていなかったこと”があってね。」
「…!」
(“言っていなかったこと”…?)
すると、トレメインは静かに僕に歩み寄った。
妖艶な囁きが耳に届く。
「私と貴方の契約は、私が死ぬまで切れることはないわ。…そして貴方は、魔力の代償として“私を愛しなさい”。」
(…!)