仮面のシンデレラ《外伝》
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ガチャ…!
白い壁の家に戻り、玄関を開けた。
扉の向こうにいた少年は、僕に気づき、目を見開く。
散々泣きはらしたような表情にも関わらず、チェシャは僕を見た瞬間から泣き出した。
「…ミ、ナト…!」
ぽろぽろと泣く少年。
歩み寄って優しく抱き寄せると、腕の中からか細い声が聞こえる。
「…もう、帰ってこないかと思った…」
(…!)
感触を確かめるかのように僕に擦り寄るチェシャ。
「…ごめん、チェシャ。一人にさせて。…怖かったよね。」
こくこくと頷くチェシャ。
覚悟を決めた僕は、そのまま静かに言葉を続けた。
「…大丈夫。僕はチェシャを置いていかない。寂しい思いはさせないから。」
残されてしまったのは、僕だけじゃない。
この小さな少年も、僕と同じだ。
「…チェシャ。僕は決めたよ。…“魔女を討つ”。エラの魔法を使ってね。」
「え…?」
はっ、と顔を上げるチェシャを、僕はまっすぐ見つめ返した。
「僕はシオリビトになって、この国の正式な住人となる。…そして時が来たら、この思いを…君と僕と、エラの無念を晴らす。」